遥は、素直に有森に手をひかれて歩いた。
サワサワ 木々の風になびく音と木漏れ日が気持ちいい。そして有森と居るのが心地いい。
「ほら」
「わぁー、いい景色ね」街が一望出来る。
「夕方の夕日も夜の夜景も星や月もいい。」
「有森君、ここよく来るんだ?」
「…まぁね」
「いつも誰と来るの」
「気になるの?」
「…別に」
素直じゃない遥になる。
「…一人。」
「…こんな所に一人で来る訳ないじゃない。」
「…ほら、そこに見える病院…」
「うん。」
「お袋が入院してるんだ。」
「お見舞いに来た時にここに来るのね」
「…認知症って知ってる?」
「…うん。何もかも忘れる病気なんでしょう?」
「…」
今迄みたことのない有森の表情だった。
その時 遥は、あの日、有森が弟の優になったあの日 言った言葉を思い出した。