有森は約束通りやって来た

遥は実家での事を有森に話したかった。

お気に入りのワンピースでちょっとオシャレしてみた。

「ね、どうして誘ってくれたの?」
「…どうしてって…解るでしょ 普通聞くかな」
「だって、あの日以来、私の事避けてたでしょ」 「避けてないよ」
「じゃ、逃げてた?」
「避けても逃げてもないよ…」
有森は苦笑いした。
「お礼がいいたかっただけよ」
「お礼?いいよ、そんなの…別になにもしてないし…」
「本当に感謝してるの」 遥は運転してる有森をみていた。やっぱり優には似ていない。
「…ん、せっかくドライブしてるのに景色見てないでしょ?」
「え?」
「そんなに見られると運転に集中出来ないよ。」
「ごめんなさい。」
「あはは」
有森に連れて来られたのは山手にある公園だった。

「ここは、何も変わった物ないんだ」
「?」
「…だけど、景色がよくて気持ちいい」
「うん。風が気持ちいいわ」
遥は目を細めて大きく息を吸い込んだ。
「…有森君だって、見てるし。」
「見てないよ」
「見てた」
「見てないって」
「素直じゃないなぁ。私に見とれてた?」
遥が茶化すと有森は、先に歩き出した。
「待ってよ、早い」
有森は、振り返ると戻って来た。
「ハイヒールじゃ歩きにくいね。」
そう 言いながら 照れ臭いのか遠くに視線を向けたまま 遥かの手を握った。