私は 彩らしくなく

しつこく聞いてくるのが

不思議だった。

 「ね、何でそんな事聞くの?」

 「楽しそうだから。

羨ましいなって。」


 私はきっと 有森君から

私が風邪ひいて

彼に病院に付き添って

もらった日の事を聞いて

面白がってるの

だと思った。

でも 私は自分の口からは

余り話したくなかったので

関係ない話をして

はぐらかそうとした。

その時 

不意に彩が話し始めた・・・

 「私ね。彼氏と別れたんだ。」 

 「え?」

彩に彼氏がいたなんて初耳だ。

驚いた。

 「・・・彼氏いたんだ・・・」

 「不倫だったから 

遥にも秘密にしてた。」

 「そうなんだ。同じ会社の人?」

 「そうじゃないよ。ある大学の教授。」

 「もう、終わったの?」

 「うん。終わらせた。兄貴の友達で、

私の家庭教師してくれてたから、

私はその人の事が 中学の頃から好きで。

初恋ってやつ。

短大受験の時に

再び彼に家庭教師お願いして

再会したんだけど、

私と彼は恋に落ちたの。そん時は

二人とも純粋で一途な想いだったのよ。」 

彩はそこまで話すと

溜息をつきながら指で

グラスの氷を回した。

 「・・・長く付き合ってたの?」

 「うん。・・・本気だったのよ。

でも 家庭教師してて

生徒と出来ちゃったなんて

私の親や兄に彼の体裁悪いから 

私は彼との事内緒にしていたの。

短大にも合格したし、

そのうち 二人で話して

認めてもらおうって。」