亜沙美は私の言葉には返事をせずに熟睡する鈴ちゃんを抱いて帰っていった。
その後ろ姿が見えなくなるまで七笑と見送る。
「…さて、あなたもそろそろ帰っ……なに、気持ち悪いんだけど」
七笑も帰らせようとしたらいきなり七笑に抱き締められた。
離してと言えば言葉とは相反してその力は強くなった。
「……みーこは押し殺してない?」
まだ彼女と関わって数ヵ月だけど、七笑の言いたいことが分かってしまう自分が怖い。
私の肩口に顔を埋める七笑の髪を撫でる。
「…バカね。どっかの誰かのせいで言いたいこと言いたい放題よ。
だから責任とって笑いなさい」
七笑の顔を無理矢理上げると七笑は今にも泣きそうな表情をしていた。
あなたにはそんな表情は似合わない。
私はあなたにそんな表情をさせるために自分のことを話したんじゃないから。
七笑の笑顔は太陽が沈んだ夜でも満月のように輝いていた。