その顔を見て私は安心して笑ってしまった。



「…私の母親はね、娘である私を捨てて恋人を選んだの」


「……え…っ」



こんなにも誰かに自分の過去を話すことになるなんて思わなかった。



でもこうして話せるようになったのは七笑に話してスッキリしたからかもしれない。



「恋人に私は邪魔、連れてくるなら結婚はしないって言われて私を捨てて恋人を選んだの。

酷い母親でしょ?
捨てられたって知ったときは苦しかったし悲しかった、もう顔もみたくないくらいにね。

亜沙美もそうじゃないの?
広瀬くんに鈴ちゃんのことを話したいのに話せない、今も好きだって言いたいのに言えなくて苦しいし悲しいでしょ?」



鈴ちゃんがいて幸せだと言ってるけど、心のどこかでは広瀬くんへと気持ちが言えなくて苦しんでいるはずだ。



それを押し殺して生きてきてしまったから、今はきっとその気持ちを忘れてしまっている。



自分の思いを押し殺して生きて苦しくないわけがない、悲しくないわけがないんだ。



だから私は隠れてしまった苦しみ、悲しみを掘り起こす。



私のような結末を迎えてほしくないから。