あの人、何やってんだろう。
そう思うと同時に隣から深いため息が聞こえてきた。
そのまま隣を見ると亜沙美が腰に手を当て、困ったように眉をハの字にしてその男子生徒を見つめていた。
「…全くあいつは何やってんだか……」
亜沙美はそのまま私を置いて男子生徒の方に歩いて行った。
私は一歩遅れて亜沙美の後を追いかけた。
「巧!何やってんの?」
「お!亜沙美!ちょうどいいところに!
いやな、メロンソーダを買おうとしたんがけど、10円足りなくて。
亜沙美持ってねぇか?」
「…はぁ。全くあんたってやつは……はい」
「さっすが亜沙美!サンキュ!」
亜沙美に巧と呼ばれた男子生徒は亜沙美から10円をもらって自動販売機にあるメロンソーダのボタンを押した。
オレンジに近い短髪をした長身の彼は心底嬉しそうに出てきたメロンソーダを手に取った。
その表情を見ればほんとにいかにメロンソーダが好きか一目瞭然だ。


