生きていたくない。
その気持ちとは裏腹に傷は回復して、腕の骨折以外完治したあーしは病院を退院した。



父親に連れられて家に帰ってすぐ耳に届いたのは誰かのすすり泣く声だった。



誰かなんてすぐ分かったけど、その声の方に足が自然と動いてしまった。
和室にいつの間にか作られた仏壇には笑顔の心音の写真、その仏壇に寄り掛かるようにして泣き崩れるあの女の姿があった。



事故があった時に見かけたよりも痩せこけている。
人の気配に気づいてゆっくりと虚ろな目があーしに向いた。



両目にあーしを映した途端にその目は鋭くなった。



"心音が死んで、どうしてあなたが生きているのよ!?"



「…あの言葉を聞いて、結局血の繋がりのない家族なんて家族になれないんだって思った。
あの心音の言葉を信じたあーしはバカだったなって思った」


「バカって心音さんは純粋に乃々とお母さんを…!」


「じゃあバカ正直にあの言葉を信じてよかったっていうわけ!?
信じずに買い物なんて行かなければ心音は死ななかったかもしれないっていうのに…!?」



"大丈夫!だってお母さんだよ?お母さんはね、娘のことを何よりも誰よりも愛してるんだよ!血が繋がってないとしても!"



もしこの言葉を信じずにすぐ帰っていたら、心音は死ななくて済んだかもしれない。



もし過去を変える力があったなら、あの時のあーしを殴ってでもあんな世迷い言聞くなって信じるなって伝えるのに。



【side end】