少しずつ痛みがよくなってきた時に父親から聞かされた。
あーしは車にぶつかった左腕の骨折、飛ばされたことによる全身打撲で済んだ。



「…じゃあ、心音さんはどうして…乃々葉が庇ったんでしょ?」


「…うん。でもそれが原因だったんだって」


「え…?」



美瑚はあの時のあーしと同じことを言った。
車が迫ってきた時、あーしは咄嗟に動けなかった心音を車から庇うように抱き締めた。



心音はあーしがいたから車にはぶつからなかった。
でも一緒に突き飛ばされて、あーしよりも軽い心音は更に数十メートル飛ばされた。



「…空中に飛ばされて、人間はまず重い頭から落ちていく。
コンクリートの道路に心音は頭から落ちて、即死だったって」



七笑と美瑚は目を丸くして固まっていて、亜沙美は目に涙をためて俯いた。



父親にもあの女にも愛されていた心音がなんで死なないといけなかったの?
あーしを殺してくれればよかったのに。



心音がいない世界なんて生きている意味ない。