少しでも体を動かそうとしただけでも全身に痛みが走った。



あーしはどうなったの?



父親に聞こうと口を開くと、あの女の泣く声が聞こえた。



「…どうしてよ……心音…っ」



…心音?
そうだ。あの時、あーしは心音を守って…



心音の無事を確認したくて痛む体を無理やり動かして横を向いた。



心音はあーしみたいに酸素マスクをつけることも点滴もすることなく眠っている。
心音の服は所々汚れていて、服からの覗く肌には痛々しい傷が見える。
そしてベッドの脇には泣き崩れるあいつがいる。



なん、で?
なんで心音が何もされずに眠ってるの?



あーしが庇ったから心音はかすり傷で済んだのだろうか。
意識がなくて眠っているだけとか。



でもあの女の姿を見ると、そんな結果ではないんじゃないかと頭の中は冷静に分析をしている。



その結末を信じたくなくて信じられなくて、あーしは近くにいた父親を見た。



視線に気づいた父親はあーしを見るとまた涙を流した。



「…父親の反応で分かったんだ。
心音は眠っているんじゃなくて、もう目が覚めないんだって」