心音は誰よりも早く横断歩道に足を踏み入れた。



「ちょっと心音…っ!そんなに慌てると……っ」



躓いて転ぶよ?
この言葉は車のクラクションで遮られた。



足を止めて聞こえるほうを向くと、赤信号なのにスピードを緩めない車がこちらに向かってきていた。



よく見ると運転手が必死な表情でクラクションを何度も押している。
もしかしてブレーキが…?



そんなことよりも……っ!



「心音…っ!」



あーしは道路に縫い付けられた足を必死に動かして心音のところまで走った。



心音を連れて行こうとしても、心音は固まったまま動かない。



あーしは心音を守るように抱き締めた。



「…そこからの記憶がなくて、目が覚めたらあーしは病院にいたの」



まず視界に入ったのは情けない顔をして泣く父親。
あーしが目を開けたら余計に不細工になってた。