台所の水道から1滴水が落ちる音が居間からでも聞こえるくらい家の中は沈黙が続いた。
鈴ちゃんはたくさん騒いだ分、静かに亜沙美の腕の中で眠ってる。
沈黙を破ったのは乃々葉が湯呑みをテーブルに置いた音だった。
「……七笑と亜沙美にも話してなかったよね、あーしの家族のこと」
「そう、だね。知り合った時に『色々あって家出した』とは聞いてたけど……」
乃々葉は希穂ちゃんとは異父姉妹だと言ってた。
ということは乃々葉のほんとの家は昨日会った父親のところ。
あの人の言い方からして乃々葉はずっと今も家出したままなんだろう。
「……あーしには妹がいるの」
乃々葉の言葉に三人一斉に首を傾げた。
乃々葉に妹がいるのは全員知っていたから。
でもそれを敢えて言ったのはきっと……
「…きほりんじゃなくてってこと?」
珍しく七笑がすぐに理解して聞けば、乃々葉はゆっくりと頷いた。
「……いるじゃなくて、いた、が正しいね。
もう一人の妹、心音はあーしが14歳の時に死んだの」


