乃々葉とはそれ以降会話もなく黙々と食器を片付ける。
作業になれてきた頃には私は乃々葉の方を見ずに食器を渡すようになった。
最後の食器を洗い終わって食器を隣に回しても、乃々葉はすぐには受け取らなかった。
「……乃々葉?」
隣を見ると乃々葉は拭き途中のお皿を持ったまま固まっていた。
「…なにも聞かないの?
あんなの見せられて気にならない人はいないでしょ」
あんなの。
きっと昨日あったことだ。
乃々葉のお母さんと言っていた。
ということはあの人は乃々葉の父親。
乃々葉は母親にはかなり冷たい言葉を言っていて、嫌っているようだった。
私が母親を嫌うのと似ていたからそれはすぐに分かった。
でもそれ以上聞こうだなんて思わなかった。


