「遅かったわね。もうあなたの出番はないけど?」


「あちゃー。みーこに全部持ってかれちゃったか~」



そうやってまるで自分の出番はもとからないと分かっていたかのような言い方をして。



ほんとはわざと遅くきたんでしょ?



普段はバカなのにこういう時だけ計算高いところが憎い。



「…あーちゃん、すごく幸せそうだね」


「…うん。きっとこれで大丈夫よ」



七笑と微笑み合ってから再び亜沙美たちを見た。



いくら母親が鈴ちゃんを育てるのに協力してくれたとはいえ、亜沙美は一人で育てないとってプレッシャーを感じてたはず。



鈴ちゃんを守れるのはこの小さな手を繋ぐのは自分しかいないとずっと思ってきたはず。



でももう大丈夫だよね?



亜沙美の隣にはプレッシャーで震える手を繋いでくれる彼がいる。



広瀬くんがきっとこれからも亜沙美と鈴ちゃんの手を繋いで同じ歩幅で歩いてくれるはず。



だから亜沙美。
あなたは一人で抱えなくていいんだよ。



広瀬くんだけじゃない。
私だって七笑だって、乃々葉だってあなたの傍にいる。



何かに躓いたら誰かに寄りかかって休憩していいんだよ。



あなただって私たちにとっては大切な"宝物"だから。



2章【宝物】完