桜時雨の降る頃

わざと明るい声でそう言った。

朔斗が、傷ついてるような顔をしてるのが気になったからだ。


「そうか、そうだよな」

朔斗は、それでこそ雫だよな、と眉尻を下げながら

くしゃ、と顔を歪ませた。


思えば、わたしと朔斗はいつも素直になれなくて

この時ですら本音をぶつけられなかった。

ただ、共通してることは

大事にしたい人がいること。



ーーーーそれが誰かは言えなくても



わたし達は3人とも、3人を大事にしすぎていたんだってことだけは


確かだった。