桜時雨の降る頃


場所探しを始める2人の後ろをノロノロとついていく。


少しすると、2人がめぼしい場所を見つけたらしく、こっちこっち、と手招きするのが見えた。



「大丈夫? 階段の方が座りやすいかと思ってここにしたけど、上りづらいよな」


浴衣のわたしを気遣ってか、そう訊く陽斗に

「ううん、大丈夫。ありがと」

と言って腰をかけた。


陽斗はいつだって優しいし、素直だ。

その陽斗が、事実をあえて言わなかったのにはきっと意味がある。


意味ーーーー


そこまで考えたところで、ドーン、と地に響くような音が鳴り、反射的に顔を上げた。



「おー、始まったな」


朔斗が空を見上げて目を細める。


パラパラパラ、と花火が散ってく音も響いてきた。


それがやたらともの寂しく思えたのはきっと

3人で見に来る最後の花火だって感じていたからだろう。


2人も同じ想いだったのかもしれない。

静かにずっと花火の上がる夜空を見上げていたから。