桜時雨の降る頃

「おい、陽斗」

少し苛だたしげに低い声で朔斗が呼ぶ。


「あとにしろよ、その話。 もうすぐ花火始まるぜ」


確かに、空はもう随分暗くなってきていて、薄闇色に染まっている。


「場所探しが先だろ」


そう言って、周りをキョロキョロして座れそうなスペースを探していた。


「……わかった」

固まったわたしをチラリと見て、ごめん、と呟くのが聴こえる。


場所探し…………


確かにそれは急ぎ事項だ。


でも、なんだかわたしの頭は働かなかった。



ーーわたしは、女子たちにあらぬ誤解を受けないように、いつも否定してきたのに。

双子と付き合ってなんてないよって。

本当の事だったし、それ以外の答えなんてなかった。


2人は違ったの……?

どうして否定も肯定もしなかったんだろう。


朔斗がそうするのはある意味理解できる。

いちいち答えるのが面倒だからだ。


でも、陽斗は?