桜時雨の降る頃

ちょっと。それ、ほんと??


疑わしい眼差しで、陽斗を見やる。


「あ、その眼は信用してないな。
朔斗、お前も聞かれたことあるだろ?」


「何を」


「雫のこと。俺らのどっちかと付き合ってると思ってるやつ多いよな」


「あー、そういえば何度かあるぞ。物好きもいるよな」



いちいち小憎たらしい一言を発さないと気がすまないのか、朔斗め。

無言で睨みながら眉間に皺を寄せていると、「ほらね」と陽斗が満足そうにこちらを見た。


「そういう情報は、ちゃんと本人にも回してよね。てか、どっちかと付き合ってると思われてたんだ。道理でお声がかからないはずだよ」


はぁ、と大げさに溜息をつくフリをしてやれやれと首を横に振った。


「ごめんな、雫」

突然謝る陽斗に面喰らう。

「え。そんなマジで怒ってるわけじゃないよ?」

ぶんぶん、と手を横に振って怒りを否定したけれど。


「俺たち、そういう時。

……否定も肯定もしないんだ」


予想外の言葉に、わたしはピキ、と顔が固まった。