桜時雨の降る頃

「行ってらっしゃい」

2人のお母さんに見送られて、わたし達は出かけた。





「ほんとにケンカじゃないの?」

念押しでわたしは訊ねた。


「違うよ。珍しく真面目な話してただけ。な、朔斗」


「……あぁ」


こんなに朔斗が不機嫌になるなんて、どんな話をしたんだか。


気にはなったけど、兄弟間の話にわたしが首を突っ込んでもしょうがないと思って、それ以上聞くことはしなかった。



まさかその話にわたしのことが関わっていたなんて、この時は思いもよらなかった。



2人の気まずい空気を払拭するべく、わたしは取り留めのない話をするのに気を揉んでいたから。