桜時雨の降る頃

心なしか、2人の雰囲気が硬い。

ケンカでもしたんだろうか。


「あんた達、女の子を待たせちゃダメよ。
…あら何、どうしたの?ケンカでもした?」

お母さんも妙な空気を感じたらしい。単刀直入に聞いている。


「ケンカじゃねーよ」


明らかに不機嫌だけどそう答える朔斗とは裏腹に、陽斗はニッコリわたしを見て言った。


「浴衣いいね、よく似合ってる」

さすが王子と言われるだけある。

女の子が喜ぶことをサラッと言えて、しかも嫌味がない。


誉められれば嬉しい。

わたしは、えへ、と照れ笑いをしながら仏頂面の朔斗に目を向けた。

ジロッと見てきたと思ったら、

「馬子にも衣装」

とだけ言って、自分の靴に足を入れた。

…………ホントに素直なお世辞が言えないやつだ。

まぁ、朔斗の口から「かわいい」とかいう言葉が出てきても似合わなすぎて笑っちゃうだろうけど。