桜時雨の降る頃

当日、わたしは支度を済ませて朝霧家へ迎えに行った。



「雫ちゃん可愛い〜、浴衣？」

出迎えてくれたのは、いつも明るい、双子のお母さん。男の双子を育ててきただけあって、たくましいお母さんだ。

「男の子は、こういう楽しみがなくってね〜。つまんないったら」


お母さんは溜息を吐きながら、「陽斗、朔斗、雫ちゃん来たわよ」と二階に向かって声をかける。


「あなた達もいつまでも仲良くて、おばさん嬉しいわ。でも雫ちゃん、いいの？ 彼氏とかいるんじゃないの？」


「あは、いないんで大丈夫です。むしろ今日は双子を独占しちゃって、女子たちに顔向け出来ません」


きっと、鬼のような誘いがあっただろうと思うと色んな意味で申し訳ない。


「何言ってんのよ。あの子達はどんな女子より雫ちゃん優先よ」


ウインクして、すごいことを言ってのける双子のお母さんにタジタジになっていると、彼らが階下へ降りてきた。