桜時雨の降る頃

「どうして? 関係が壊れるのが怖いから?」

きっと以前から、わたし達の微妙な関係が気になっていたのだろう。

今までそこに具体的に切り込んできたことはなかったのに。


「ぶっちゃけ、そうです。小さい頃から知ってるのに、急に男女になれる気もしないし」


そう言いながらも、中3の時の事故みたいなキスを思い浮かべる。




あんなことがあっても、わたしと朔斗は変われなかった。

変わらないことを貫いたんだ。



「でも、陽斗くんはそうじゃないんじゃない?

実を言うとね、私、結構前だけど陽斗くんに告ったことあって」


当然断られたんだけどね、と微笑みながら言う先輩の突然の告白に仰天して、目を見開いたまま固まってしまった。


知らなかった…………。


「その時にね、言われたの。
“気持ちを伝えるのって難しいですよね”って。ありがとうって同時に言われたから、その時は私が伝えた想いに対して言ってくれたんだと思ったけど」



首を捻りながら先輩は続けた。



「今思うと、あれは陽斗くん自身に対して言ってたのかなって」