桜時雨の降る頃


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わたしと陽斗は同じ部活だったから必然的に放課後は一緒にいることが多かった。



でも、朔斗はやっぱりわたし達と行動を共にすることが少なくなっていった。


部活が休みの日に、たまには3人でどっか行く?と誘っても断られることが多くて。



風の噂で、朔斗が誰々をこっ酷く振ったとか

年上と付き合ってるらしいとか

なぜかやたらと女性関係だけは耳に入ってくる。



陽斗は、以前わたしに話してくれたように、告白をされても丁重に断ってるらしく、誰とも付き合ってない状態が続いていた。



仲良くしているマネージャーの先輩に言われたことがある。


「陽斗くん、本命いるでしょ」



「……どうなんでしょうね。確かに、軽く付き合ったりはしないことにしてるみたいですけど」


ここだけの話にしてくださいね、と念押ししておく。変に噂が広まったら、わたしのせいになってしまう。


「雫ちゃんさ、あんな素敵な幼なじみがそばにいて、何とも思わないの?」


「わたしには勿体無いかな、と思ってますよ」


「そうじゃなくてさ。
近過ぎると難しいのかなぁ。
男として見ないの?ってことよ」



いつか、佳奈ちゃんにも言われたっけな、似たようなこと。

遠い目をして答える。


「見ないようにしてるかもしれません」


あの頃は、必死に否定したけど

今は少しだけ自分の中で消化している。

男としては見てない、なんて言い切れる自信がないことを自覚していた。