桜時雨の降る頃

前に朔斗が言っていた、カップルの始まりかた。

陽斗は、経験してみたうえで、自分の結論を出したんだ。


本当の優しさとは何か

悩みながら。


「だから、俺はもう、好きだと思える子としか付き合わない」


いつの間にか、陽斗がピタッと歩くのを止めてわたしにまっすぐ焦点を合わせていた。



「朔斗はまた、違う答えを出したみたいだけどな」


ーーえ?

どういうことだろう、と陽斗の顔を見つめ返すと、その柔らかな瞳が少しだけ悩ましげに揺れていた。

けれどそれは一瞬で

すぐに元の陽斗の優しい眼差しに戻っていく。



「雫は、どんな結論を出すんだろうな」


結論ーー

どういう意味でだろう。

好きな人と付き合うのか、付き合ってみて好きになるのか?


それともーーーー







突然、渇いた風がびゅうっとわたしと陽斗の間を流れていく。

これ以上踏み込んだらダメだと言い聞かせるように。