桜時雨の降る頃

さっきは家の匂いに紛れてて
朔斗の淡いその香りに気付かなかった。


朔斗は勉強机の前まで歩いていき、その引き出しをじっと見つめる。


1番上の段には鍵穴がついていた。


「多分これじゃねーかな。
前、何か探してて、ここ試しに開けようとしたら開かなくて。鍵失くしたからムリって言ってたような…」


決して、宝箱といえるような形容のものではないけれど。



大事な何かをここにしまって
わたしだけが見られるように、鍵を失くしたことにしてたんだね。


陽斗は一体、何をここにしまったんだろう。

そして何をそんなに怖がっていたんだろう。


突然その普通の引き出しが

開けてはいけないもののような
得体の知れない恐怖が詰まっているものに思えてきて

鍵を持つ手が固まった。