四つ折りにされた手紙らしきものを、朔斗がわたしへ向ける。


「…………開ける前に確認しときたいんだけど」


朔斗がわたしの瞳を探るように見つめてくる。


「正直に答えて」

ゆっくりと、コクンと頷いたわたしに
朔斗は質問を投げかけた。


「まだ、抜け出せてねーよな?」


何から?誰から?

主体をぼかした質問に、どう答えればいいのか考えあぐねたけれど


朔斗が訊きたいのは当然ーーーー


過去から抜け出したかどうか。

陽斗のことを思い出しても大丈夫になったか。


わたしは、あの約束どおり、朔斗に自分からは連絡をこの時まで一切して来なかった。


今回のわたしからの接触が、その約束を果たしてのものか
それともイレギュラーなものなのか
確認しておきたかったのだろう。


わたしは、黙ったまま

首を縦に振った。


さっきからほとんど、目線を合わさずにいたから
朔斗は察していたんだろう。

そうか、と呟いて

少しの間、沈黙が流れた。