桜時雨の降る頃

「ごめん、茶化しすぎた」

陽斗がわざわざ謝ってくる。
別にこんなことで本気で怒るわけないのに。

「ばか、ただの冗談だろ。わかってるっつーの」

謝らなきゃいけないのは、むしろ俺の方だ。

とはいえ、言えることじゃないから黙ってるしかない。


「寝不足? 目、赤いから」

「……あー、蹴られた後、痛くて目が冴えちゃって」

「ホント災難だな」

「だろ」

そのまま、朝食へ行こうと廊下を進むと
友達と歩いてきた雫と出くわしてしまった。


やっぱり目が合わせられない。

陽斗と雫が喋ってる間も、俺は視線をあさっての方向へずらしていた。


腫れた頬を気にしたのか、雫が「冷やした方がいいんじゃない?」と言ってくれても

妙につっけんどんに「気にすんな」としか返せなくて

昨夜あんなことしたくせに、俺ってどうしてこうにしか出来ないんだろうと
内心頭を抱えた。