桜時雨の降る頃

その場に残された俺は、打たれた頬を手で抑えながら

「痛ってぇ……」

と呟いた。


陽斗を応援してやるって決めたのに

何だこのザマは。


色気なんて皆無だったはずのアイツに
触れたくなるなんて。


真夜中のこのおかしな空気がそうさせたんだ、
絶対そうだ。



盛大なため息を吐く。


…………ごめん。


俺のヨコシマな気持ちで、汚してごめん。

心の中で雫と、陽斗にも悪い気がして
2人に謝り倒した。


したことに対する罪悪感やうしろめたさはあったけど


多分、雫にとって初だったろうキスの相手が俺であったことに

これまた勝手ながら安堵していた。


雫の言ったとおりだ。

俺は狡いな。


ふ、と自嘲的な笑みが浮かびつつ

目頭が少しだけ熱くなった。


俺には雫を守ってやる資格なんてねーよな。


……馬鹿だな、俺。



ジンジンと痛む頬と自己嫌悪で

その夜、俺は殆んど眠れなかった。