桜時雨の降る頃


雫が泣くとこなんて見るの、小さい時以来だ。

え、俺が泣かせたのか?


「なんでって……、さっき欠伸したからかな?」

雫の口からは、明らかな嘘が飛び出してくる。


「アホか。違うだろ。つくならもっとマシな嘘をつけ」

「…………だって」

言い淀む雫の表情には、どう言ったらいいかわからない、と困惑の色が浮かんでいた。


なんで泣いたんだ?

俺がガラにもなく土産なんてやったから、とか?

…………

そんなことで?

まさか、な。

自分の頭によぎった考えを打ち払いながら、
それ以外の可能性を必死に探った。


でも、何も見つからなくて

どうしようもなくなった俺は、気付けば
雫をぐい、と引っ張って
自分の腕の中に寄せていた。

らしくないと思いながらも、そっと雫の頭を撫でた。

ーーーー泣き止ませたくて。




「…………泣くなよ。お前が泣くと、俺どうしたらいいか分かんなくなる」