桜時雨の降る頃

「……まさかとは思うけど、気付いてねぇの?

陽斗の気持ち」


相変わらず呆けたような表情をしている。
でも、徐々に落ち着きをなくし始めてるのが見て取れた。



「見てたら分かるだろ。あいつは素直だから、気持ち隠したりなんてしない」


「……………」


「ただ、自分でもちゃんとは気付いてないのかもしれねーけどな。鈍いから」


いや、今日気付いたかもしれない。
俺との話の中で。



雫は無言だった。


俺にその可能性を否定させるものはないかと

必死に考え込んでいる様子だ。


反対意見があるなら聞いてやろうと
黙って雫が口を開くのを待っていたら、突拍子もない質問が飛んできた。



「陽斗と朔斗って彼女いたことあるの?」