桜時雨の降る頃

陽斗はそれまで、俺が雫を好きだと思っていたんだ。

だから自分の恋愛感情に気付かずに蓋をしていたのかもしれない。

兄弟揃って似たような思考回路してるもんだと
若干げんなりする。


でも俺は、雫を彼女にしたいとか
そんなことは考えたこともなくて

陽斗が雫を好きだっていうなら応援してやりたかった。

他の男ならもっと嫌だったかもしれないけど
陽斗なら。


きっと陽斗は、もし俺が雫を好きだと言ったら
身を引いてしまう奴だから。





そんなことさせたくなかった。


そんな必要はない。


俺の初恋はうやむやに終わらせた。


そのままでいいんだ。


陽斗はまだ自分で分かってなさそうだけど、

100%雫に惚れてると思う。


いつだって雫の気持ちに敏感で

雫が嬉しそうだと陽斗もすげー嬉しそうに笑うのを俺は知っていた。

小さい頃からずっと。