桜時雨の降る頃

でも、あいつが側にいなかったらきっと
物足りない、と思うかもしれない。


「そっか。でも、言い合いしてても楽しそうだよな。
朔斗って女の子の前であんまり楽しそうにしないから、てっきり好きなのかと思ってたけど」

顔がピキ、と固まった。

チュドーン、と爆弾の落ちる音も脳内で聴こえる。

お ま え !!

爽やかに何言ってくれてんだ!

こめかみに力が入ってピクピクと血管が躍った。


「バカか! 勘違いすんな!
そんなわけねーだろ!」



思わず怒鳴り声に近くなってしまい、誰かに聞かれたかと辺りをキョロキョロ見回した。


ふはっ、と笑って陽斗は肩を揺らしている。


笑ってる場合かよ、と俺はギロッと睨んだ。


それに気付いた陽斗が笑いを引っ込めて
ふと真顔に戻った。


「じゃあ、俺が雫のこと好きだとしても問題ない?」


「…………当たり前だろ。お前の趣味はどうかと思うけど」


「雫に怒られるよ」

「お前が言わなきゃバレねーだろ」

「そうか」

陽斗は、ふっと笑って目を細めた。