桜時雨の降る頃

視線を上げると、当の陽斗は目を丸くしたまま、口をあんぐりと開けていた。

ーーえ?違うのか?

と俺まで目を見開いてしまう。


「あぁ、いや……
そこまで考えてたわけじゃなかったからビックリした」


そこまで考えてないセリフだったことの方に
俺がビックリだ。


「でも、そっか。世間一般的には、そういうことだよな」


納得したように頷いているが、結局のところどうなんだ?


好きなんじゃないのかってことをもっと敢えて気付かせた方がいいのか、

自覚するまで放っておいた方がいいのか。


そんなの、人にとやかく言われて気付くもんでもねーよな……

考えていたら、思いもよらない反撃を受けた。


「朔斗は雫に隣にいて欲しいとか思わない?」


一瞬、思考が止まった。


けれど、それを感じさせないように何とか俺は口を開く。


「…………俺はヤダね。あんな小煩いのが隣にいたら、うっとーしいだろ」


俺と雫はしょっちゅう言い合いをしていたから
小煩いと思ってるのは事実だ。