桜時雨の降る頃

なんて答えようかと黙っていたら
陽斗は溜息を吐いた。


「俺たちがそう思ってても雫にはいい迷惑だもんな。とりあえず卒業までは我慢だよな」


勝手に俺も仲間に入れられていることに、オイ、と突っ込みを入れたくなったが
色々鬱憤が溜まってるようだし触れないでいてやった。

王子と呼ばれるのも本当は嫌なんだろう。


「お前はお前のやり方で、雫といられるようにするしかねーよ。
卒業したって、お前が雫を構うとやっかむ奴はいるだろうからな。それだけは気をつけてやれよ」


俺と同じ失敗はして欲しくない。

陽斗も一度だけ彼女を作ったことがあったけど
あれも多分陽斗には不本意だったんじゃないかと思う。


「隣に雫がいるのが自然なんだけどな。
他の女の子が想像できない」

さっきからどういう意味で言ってるんだ。
ていうか、ファンが聞いたら悲鳴ものだ。
俺は顔を片手で覆いながら俯いて尋ねた。

「それってつまり、
……好きってことか?」

焦れた俺は近くに誰もいないことを確認してから、直球の質問をした。

兄弟でこんな話すんの小っ恥ずかしくないか?と思いつつ。