桜時雨の降る頃

瞬く間に人に囲まれて
まるで芸能人の囲み取材か、という状態になってる陽斗。


俺なら一喝して蹴散らすとこだけど
そこは人のいい陽斗だけあって苦笑いのまま
受け答えしている。


助け船を出してやるかと口を開きかけたとこで
先生の合図の笛が鳴り、皆渋々自分の列へ戻っていった。



その夜。
就寝までの自由時間に、俺は陽斗に声をかけられ部屋の前の廊下で立ち話をしていた。


「神社どうだった?いいの撮れた?」

「あぁ。景色良かった。帰ったらまとめて見せてやるよ」

ついでに猫も写真に収めていたのを思い出し、雫にも後で見せてやろ、と思った。
キーホルダーもそん時でいっか。

そんなことを思っていると、陽斗が気まずそうに

「朔斗。俺、やらかした」

と打ち明けてきた。

昼間の件か、とピンと来た俺は苦笑を滲ませる。

「デートのこと?」

俺が訊くと、あぁやっぱり知ってたか、と陽斗は項垂れた。