桜時雨の降る頃

行ってみると、土産屋のような感じで、猫グッズだけを扱ってるわけじゃなかった。

店先に並んでるとこからすると、確かに店のイチオシなんだろうとは推測できる。


買うつもりは別になかったのに、
眺めていたら店員に話しかけられた。


「おにーさん、イケメンねぇ。彼女にお土産?」


「いや……」

否定のつもりで口を開いたのに、ヒマなのか店員は構わず喋り続けてくる。


「今猫グッズって女の子に人気なのよね。
このへんとか割とよく売れるのよ」


ミニトートバッグとか
髪飾りとか
女子が好きそうな小物がわんさか置いてあった。

興味もなく一瞥したものの、ふと思い出したことがあった。

そういや、雫ってこーゆうの集めてたな。

中学入っても好きなものはあまり変わらないのか、さりげなく猫グッズを使っているのは知っていた。


黒猫のキーホルダーが目に留まり逡巡していると
やはりさっきの店員が寄ってきて大絶賛するので、それを振り切りたい気持ちもあって

ぶっきらぼうに「じゃあコレください」と会計し、逃げるようにその場を後にした。