桜時雨の降る頃

中3の修学旅行。

俺はこの頃、写真の面白さに目覚めていて

カメラを持って単独行動に出ていた。
同じ班の奴らには先生に見つかんないように協力してもらった。


古くて有名な神社へ行って
その歴史の片鱗と
きっと昔からそんなには変わらない風景を写真に納めてみたくて。


カシャカシャ、とシャッターを切っていると

にゃー、と小さな鳴き声が足元から聴こえてきた。


見ると、ちょっと薄汚れたブチ猫が足に擦り寄っている。


「なんだお前、人懐こいな」

しゃがんでその猫の喉を撫でてやると満足そうにゴロゴロ言った。


にゃー、とまた鳴き声が聴こえる。

今度は違う方向からだった。

よくよく見ると、いつの間に集まっていたのか

俺が写真に集中してて気づかなかっただけかもしれないが

何匹も猫がそこらじゅうに寝そべっていた。


「なんだこりゃ。すっげー数いるなぁ」

思わず独りごちたら、近くを通りがかった人が

「ここは猫の場所なんだよ。日当たりいいからね。結構有名だよ? 」

と教えてくれた。

「そうなんすか」

「うん。ほら、あそこでグッズ販売してるくらい。猫人気にあやかってるのかね」

ははは、と笑ってその人は去っていった。


へー、と思って
なんとなくその店の方へ足を向けた。