桜時雨の降る頃

これからどうするかを話し合いながら、

俺はしょうもない提案をした。

俺たちのどっちかと付き合ってることにすればいいって。


でも、それはあっけなく冷たい視線と共に却下されてしまう。


人の気持ちを踏みにじる嘘はダメだと。


誤解されたくない奴がいるんだ、と
雫にもそういう相手が遂に出来たのかと思って
ニヤニヤしながら突っ込んでみたけれど

まごまごするものの、微妙な反応。


雫だって好きな奴くらいいるよな。今までそんな話をしたことはなかったけど。
もう初恋くらいしてる年だ。


「いるような、いないような?」

なんて、どっちにでも取れる答えが返ってくる。

雫がエヘ、と笑う時は
何かをごまかそうとしてる時。

俺も陽斗もそれは分かっているが、陽斗は「誰?」なんて
ちょっと突っ込んでみている。
珍しく意地悪モードだ。

俺たちにもいるんじゃないのか、と問いかけれられたけど

揃って「いるってことで」と適当な答えを返した。

いない、と答えるのも癪だし。

雫もそんな気持ちだったのかもしれないな、と後から思った。