桜時雨の降る頃


「俺らのために言ってくれたみたいですけど、
やめてもらえませんか? 雫をターゲットにするのも」

陽斗がやんわりと付け加える。
穏やかに怒ってると見た。


「……あんな子と付き合ってるとか思われてもいいわけ?」

「センパイより全然マシですね」

これには即答。


「なっ! ちょっと酷いんじゃない!? 1年のくせに生意気なのよ!」

違う先輩が喚きだした。

その1年にキャーキャー言ってんのは誰だよ。

俺は構わず全員の顔を眺めて睨みつけていると

キャプテンがクスクス笑いながら、


「どうしよっかな。そんなふうに言われちゃうとますます指導したくなっちゃう」

と目を細めて言ってきた。


「そんなにあの子に構ってほしくないなら、私と1日付き合ってよ。それで許してあげる。
どう? 簡単でしょ?」


はぁ? 何言ってんだこの女は。

開いた口が塞がらなくなったところで、ジャリ、と足音がした。

ひょっこりと姿を現したのは、雫だった。