桜時雨の降る頃

「どうしたんだよ、朔斗」

慌てて追いかけて来た陽斗。


「いや、どうも雫の様子が変だったような気がして」


言いながら、体育館の方へ足を向けると

ちょうど雫の友達が佇んでるのが見えた。


ーーーー杉崎は一緒じゃなかったのか?


てことは、雫1人で頼まれごととやらを片付けてるってことか?


「杉崎」

俺が声をかけると、杉崎は振り向いて、「あ!」と驚いて声をあげた。


「雫、もしかして一人で何かやってんの?」

心配げに佇んでいた杉崎の様子から、嫌な予感がしてくる。


俺たちの姿を見た時、ホッとしたような顔もしていた。


「良かった、来てくれて。呼びに行こうかと思ってたの。しーちゃんが先輩に呼び出しされちゃって」


“呼び出し”イコール“あんた生意気よ”通告だ。


はぁ、と溜息が漏れる。

「場所は」


「体育館裏だって」


「分かった。杉崎、帰ってていいぜ。俺たちが行くから」


「ごめんね、送ってやれなくて」


「ううん、まだ明るいし全然大丈夫。
しーちゃんを助けてあげて」


安心したように胸を撫で下ろし、杉崎は「朝霧兄弟に任せる」と言って帰っていった。