桜時雨の降る頃


「なんか、面白くないな」

そいつが俺たちの前から去った後、ボソッと呟いた。


「……そうだな」


陽斗もそれに同調して、ぼんやりしていた。



何だろう、この独占欲みたいなのは。


大事なものを取られまいと守ろうとするような感覚は。



雫のいいところは、俺たちが知ってれば充分だ。

つーか……


…………

やばい。焦ってたってことは

陽斗にも負けたくないのか?俺。


マジかよ。




認めたくない感情が芽吹いているのを

ようやく俺は自覚した。


けど、すぐに蓋をする。
なぜかは分からないが、そうした方がいい気がしたんだ。第六感的な。


「今の、雫が知ったらどう思うかな」


陽斗が心配げに俺に尋ねた。


「あいつのあの様子じゃ多分告るのやめるだろ」

「いや、俺たちが邪魔しちゃったかもしんないだろ」


なんの心配をしてるんだ。
それでいいじゃねーか。


「雫はあーゆう奴は選ばねぇよ、多分」