桜時雨の降る頃



俺たちが顔を見合わせて黙っていると、そいつが更に続けて言った。


「オレ、卒業する頃に告ろっかなと思ってて。
お前らに一応お伺いを」


ヘラっと笑うその締まりのない顔が妙にイラッとした。


「俺らが好きだっつったらどーすんだよ」


妙な敵対心みたいなのがムクムクと湧き上がり
思わず挑発的な態度を取ってしまう。



俺の言葉にキョトンとした後、そいつは真面目くさった顔で言った。


「そしたらやっぱ、ムリかなぁ。
お前らが好きなら身を引くよ潔く。二階堂は多分、お前らしか見てないの分かってるから。


両想いの仲に割って入るほどの勇気はないし」


今度は俺たちがキョトンとしてしまう。
雫が俺らしか見てないだろうって話より、そんな簡単に諦めるのかよってことに。



「雫に対する気持ちはその程度?」

シビアな質問を陽斗が投げた。

そいつは黙り込む。


「だったら、やめといて。
俺たちが雫のこと好きじゃないわけないだろ」


陽斗の言った“好き”は、この時は恋愛の意味じゃなかっただろうけど


雫にそういう感情を向けるヤローがいることに初めて気付いた俺たちは、自然と雫から男を遠ざけた。