刻に忘れられた旅人


 高校最後の夏休みの初日をこんなところで時間を潰している高校生はいったい全国で何人いるだろうか。

 そんなどうでもいいことを考えていると背後から人の声が聞こえた。蒸し暑い空気のなか、それな清らかな水のように僕の耳へと届いた。

「ねぇ、そこの君」
 
 振り向くと、ベンチの背後に一人の少女が立っていた。微笑を浮かべ、腰まである長い髪を風になびかせていた。

 にこりと少女が笑う。

「一緒に遊びませんか?」