胸のあたりまで伸びた真っ直ぐな髪は、私のお気に入り。

新しい高校の制服は、私の高校を決めた理由の1つであるくらい 可愛いデザイン。

素敵な出会いに期待して、色つきのリップを塗ってみる。

「いってきます!」

鈴華の通う高校は、最寄駅から二駅。

中学は家から近かったから、電車で通えるのが少し嬉しい。

駅に着くと、

「あっ、」

「え?」

知らない男の人に声をかけられるけど、見覚えがない。

「?」

「鈴?」

あ、この呼び方…

「えっ、綾くん?」

「鈴、久しぶり」

にこっと爽やかに笑う彼は、私が小さい頃に隣のお家に住んでいた4つ年上の綾くんだった。

綾くんが何年も前に引っ越してから会っていなかったけど、黒髪をさらさらさせて 大人なかっこよさを漂わせている。

かっこよくなったなあ、綾くん。

「鈴、ずいぶん変わったね。 女の子らしく。」

「綾くんこそ大人になっちゃって、全然分からなかったよ〜〜。 すごくかっこよくなった!」

目をキラキラさせて言う鈴華に綾くんは、

「はいはい、どうも。」

と、ちょっと冷たい反応。

こういうところは小さい頃から変わってないなあ。

「綾くん、今からどこ行くの?」

「どこって、大学だよ。ここから二駅。」

「あ!鈴華も同じだよ!!!嬉しいね!」

「朝からうるさくなりそうだけどね。」

「1人より鈴華といる方がきっといいことあるよ!」

「それならいいけど。まあ期待はしないよ。」

ちょっと不安だった電車通学も、綾くんと一緒なら大丈夫そう。

その日の入学式では、隣の席の

平井 愛梨(ひらい あいり)ちゃん

とお友達になれた。

少し茶色いボブをふわふわさせながら、おしゃべりする彼女は陸上部だそう。

いいことづくめの4月をスタートさせた。