そんな悩める十代、苦悶の男子高校生を演じ始めて一月ほどたったある日。
もう僕なんていらないと思えた。孤独なら孤独に死のう。知らない人たちは理解出来ない理由だろう。僕は僕がいらなくなった。
遺書も何も残さないで身ひとつでベランダへ出る。空を見上げるともうすぐ満月になりそうだった。そっと踏み出したその時、上の階のベランダから声が聞こえてきた。
歌う様な優しい声だった。
女の子の声だ、年は同年代くらいだろうか。
なんだか泣くのを必死に堪えて話しているようだった。僕がその声が詩を読んでいると気付いた頃には、既に話は追い付けないほど進んでいた。
しばらくして声が止むと本を閉じる様な音がした。聞いた事のある音。学生が使う様なノートを閉じた音だ。ならば今の詩は上の階の女の子の創作物なのか。
気が付いたら思わず拍手をしていた。自分の両手を無意識に合わせて何度も音を発していた。
詩の内容なんて分からなかった。しかし何もない僕には、こうして自分で作り出したナニカがあることが、素晴らしく思えた。羨ましかった。とても悔しく思えた。
次の日の夜もベランダで声を待ってみたが、聞こえてくることは無かった。
いつのまにか僕には明日への楽しみが出来ていた。
もう僕なんていらないと思えた。孤独なら孤独に死のう。知らない人たちは理解出来ない理由だろう。僕は僕がいらなくなった。
遺書も何も残さないで身ひとつでベランダへ出る。空を見上げるともうすぐ満月になりそうだった。そっと踏み出したその時、上の階のベランダから声が聞こえてきた。
歌う様な優しい声だった。
女の子の声だ、年は同年代くらいだろうか。
なんだか泣くのを必死に堪えて話しているようだった。僕がその声が詩を読んでいると気付いた頃には、既に話は追い付けないほど進んでいた。
しばらくして声が止むと本を閉じる様な音がした。聞いた事のある音。学生が使う様なノートを閉じた音だ。ならば今の詩は上の階の女の子の創作物なのか。
気が付いたら思わず拍手をしていた。自分の両手を無意識に合わせて何度も音を発していた。
詩の内容なんて分からなかった。しかし何もない僕には、こうして自分で作り出したナニカがあることが、素晴らしく思えた。羨ましかった。とても悔しく思えた。
次の日の夜もベランダで声を待ってみたが、聞こえてくることは無かった。
いつのまにか僕には明日への楽しみが出来ていた。
