練習後。私は、一人でボール磨きをしていた。

 けど……悲しくて手につかない。

 あの中村君が、他のコの告白を受けた。

 それでショックを受けて、私は初めて中村君を好きなんだと気づいてしまった。

 こんなことなら、気づかない方が良かった。


「マネージャー!」


 突然の声に、体が固まった。


「なっ、中村君……」


 何で? 何でこんな時に来るの?

 中村君はゆっくりと近づき、座っている私を見下ろした。

 いけない、涙がっ……。

 気づかれないように、手で目を拭った。


「ど、どうしたの? 彼女は?」


 とっさに口にして、胸を痛めた。


「……彼女?」

「私……告白現場見ちゃったの。告白、受けたんでしょう?」


 ボールを磨きながら訊いた。

 私、平然としてるように見えるかな?

 中村君への気持ちに、必死になってフタをした。


「……いえ。断りました」

「…………えっ?」


 予期しない返答に、ボールから中村君へと視線を変えた。


「だって、あんなに親しげだったのに?」

「アイツは幼なじみなんです。だから……」


 そう……だったの。

 あ、涙が勝手に。

 拭っても拭いきれず、もう泣いてるのがバレバレだった。

 違うと聞いたら、感情が隠しきれなくなった。

 中村君は、そんな私と同じ目線になるように片膝をついて座った。

 久しぶりに近くで見た真剣な顔に、余計に涙が止まらなくなった。


「俺はもう……マネージャー以外考えられないんです。

 今度の試合、勝つことが出来たら……

 俺と、つき合って下さい」


 中村君っ……。


「俺、絶対勝ちますから!」

「……うん」


 私も、勝てるようにサポートする。

 だから、絶対勝ってね。