「――どうしたんだよ、エリ。こんなところに呼び出したりして」
バスケ部が始まる前、幼なじみに校舎裏へ呼び出された。
小学校からずっと一緒のエリ。今はすっかり大人びていて、うっすらメイクもしている。
「豊の好きなマネージャーさんとは、最近どうなのかなぁっと思って」
俺のことを冷やかすように訊いてきたエリに対し、ギクッとした。
エリにはマネージャーが好きだということは話していたけど、気まずくなったことは話していない。
「マネージャーさんのこと、あんなに『好きだ』言ってたのに、最近全然言わなくなったじゃない?」
「べ……別にっ」
心中を悟られたくなくて、そっけなく答えた。
そういえば、気まずくなってからは、マネージャーのことを口にしていなかった。
苦しくて、口にする気にもなれなかった。
勝手にキスをして、それでマネージャーを困惑させて、『話しかけてこないで』まで言われて。
俺……もうダメかもな。
「あ。その様子からすると、もしかして……フラれたぁ?」
「っ!」
エリにズバリと言われ、ついイラッとした。
入ってほしくないところに、無理矢理入り込まれた気分だ。
「んだよ。言いたいことってそれかよ。なら、もう行くぞ。じゃあなっ」
頼むから、今は放っておいてくれ。
冷たくエリを突き放し、背を向けて歩き出そうとした。
「待って、ごめん!
そうじゃなくて……
私……豊のことが好きなのっ!」
「なっ……」
エリが……俺を?
振り返ると──
エリは、今にも泣き出しそうだった。
胸がズキッと痛んだ。
そんな……エリが、俺を好きだなんて。
そしたら、今までどんな想いで、俺のマネージャー話を聞いていたんだろう……。
ずっと辛かったに違いない。
自分の好きなヤツが、他の好きな人の話ばっかしてるって……俺だったらそんなの耐えられない。
なのにエリは、辛い素振りも見せずに、俺の話を聞いてくれていた。
俺ってヤツは、そんなことにちっとも気づきもしないで……。
エリに冷たくした自分を殴りたくなった。
「……ありがとな。エリ」
「豊……」
頭に手をポンと乗せたら、エリの瞳が涙で潤んだ。
「でも、やっぱり俺……マネージャーが好きなんだ」
エリをずっと傷つけていたのは、痛いぐらいわかった。
それでも……自分の気持ちは変われない。
変われないぐらい、マネージャーが好きなんだ。
「……うん。そう言うと思った。いいの。私も言えてスッキリした。
その代わり……ガンバってよ!」
「あぁ」
笑って応援してくれたお前の気持ち。決して無駄にしない。
気まずくなってる場合じゃない。
フラれたかもと落ち込んでる場合じゃない。
マネージャーに、もう一度気持ちを伝えよう。