あたしのことを女の子というのは、七海くらいだ。


実際に、綺麗な茶色のボブヘアーで爪の先まで手入れしてあるゆるふわ女子の七海に対して…



あたしは放っておいたら伸びていた黒髪を、邪魔にならないようにポニーテールで束ね上げただけ。



爪はおろか、化粧すらしていない。


強いていうなら…男子でもしているリップくらい。


女子力という言葉から、最もかけ離れている自信がある。



「そんなんだから、女子から“騎士様”なーんて言われちゃうのよ!!」


「ははは…」





“騎士様(ナイトさま)”


それは、あたしにつけられたアダ名。


あたしが知らない間に広まっていて、それを知った時にはもう止められなかった。



去年の夏のことーーーー。


「なぁっ!!なんで俺じゃダメなんだよ!?」


「ちょっと…離してください…!!」


部活がオフで七海と帰ろうとしていた矢先に見てしまった光景。


それは、身体の大きな男がか細い女子に迫っているところだった。