飲んでいたいちごみるくを吹き出しそうになったところを、必死に我慢する。


聞き慣れた腹の立つ声。


その持ち主であるアイツが、あたしの耳元で囁いたのだ。



「あら、王子」


「なっ、なんでお前…こんなところに…ゴホッ…」


慌てて後ろを振り向くと、予想通り。


腹が立つほどのきれいな顔をした男が。


「なんでって…ここ、俺のクラスでもあるんだけど」


「そういうことじゃない!!お前の席は廊下側だろう!なんでこっちの窓側の方に来るんだよ!?」



「いや、葵…あんたそれは理不尽でしょ…」



見方であったはずの七海に言われ、言葉に詰まる。


確かに、今のは理不尽だったか…。


ちょっと罪悪感を感じ、なんとなく話を変える。

「それで?なんか用があるんだろう?」


「ん?特にないよ」