「落ち着いた?」
あれからどれだけの時間が経ったんだろう。
「・・・はい・・・。すみません、ありがとうございました・・・」
見ず知らずの人に介抱されるなんてなんという恥・・・。
穴があったら入りたい気分だ。
「本当にありがとうございました、帰れます、帰ります。」
足に力を入れ立ち上がろうとしたが立てない。
こんなにもお酒弱かったっけと思うほどだ。
すると彼は少し考え後にわたしの前にしゃがみこんだ。
「んー、大丈夫そうじゃないね。
休めるとこ行こ?はい乗って。」
・・・え・・・。
この人は今わたしの前でしゃがんでいる。
背中をこちらに向けて手を出している。
「お、おんぶ・・・?」
てか、休めるところってどこ?!ホテルしか思い浮かばないんだけど・・・
「うん、そう。だって歩けないでしょう。
しょうがない、ほら諦めて乗って」
「い、いや無理です・・・
わたし重いし・・・?無理!本当に・・・」
「嫌なら強行で連れてく。」
そういうと彼はわたしをひょいっとお姫様抱っこした。
「え。ちょっと、は?!」
見ず知らずの男の人にお姫様抱っこされてるこの状況。
どういうことだ、これは。
「暴れるな、本当に重いんだから」
・・・こいつ、失礼だな・・・。
いや、重いけど・・・。
「わ、わかりました。おんぶされます。だから!とりあえずおろして!
お姫様抱っこは無理!こんなの恥!いや、おんぶもだけど!
と、とりあえずおろして!」
すると彼はにやっと笑った。
この時初めて彼の顔を見たがチャラそうに見えない。
普通の会社員って感じの人だ。
「わかればよろしい。」
そういうと彼はどさっとわたしのことを降ろした。
