「こうたさん、お先に失礼しました。
お風呂、ありがとうございます・・・。」
わたしがリビングに入ると彼はドライヤーをもって待っていた。
「ほれ、髪乾かしてやるからここ座れ」
「いや・・・自分でできますよ」
「いいから、座れよ。」
半ば強引に座らさせられるとぶぉーと温風が後ろから頬を撫でた。
「おこちゃまは言うこと聞きなさーい」
小ばかにしたような言い方にイライラしたものの
髪をなでる彼の手は優しくてなぜだか胸が苦しくなった。
・・・こんな大人、相手にしてくれるわけないか・・・。
好きになっても無駄。
そんな思考がわたしの脳裏に浮かぶ。
「はい、おわったぞ。」
「ありがとうございました、じゃあわたし・・・
「俺も風呂入ってくるから待ってて。」
「いや、帰ります」
「いいから待ってろ。」
彼はそういうと立ち上がり洗面所の方に向かった。
このまま帰るのは失礼かな、しっかりお礼もできてないしと
わたしは彼の帰りを待つことにした。
部屋ではテレビから流れてくる乾いた笑い声が響いていた。
